【徹底解説】ロックダウンは憲法違反になる?高知・富士の法律相談
【ロックダウンは憲法違反になるか】に関しましては、政治に関心がある方々にとって重要な話ですので、「弁護士コシのひのもとちゃんねる」のコシ弁護士の記事をこちらで掲載させて頂きます。
ロックダウンは憲法違反になる!?
現在、日本では新型コロナウイルスの感染数が拡大している状況にありまして、自治体や自民党内などからロックダウン(都市封鎖)のような強制措置を伴う対策の検討を求める動きが出ています。
ロックダウンとは?
そもそもロックダウン=一定期間、対象とする地域で人の移動を制限したり、企業活動を禁じたりする措置をとることをいいます。
欧米では、ロックダウンの内容として、在宅勤務を義務化、学校を休校、生活に必須な事業以外の営業を禁止にする、大人数の集会を禁止し、違反した場合には罰則を科しています。
ちなみに、現在の日本では、あくまで強制ではなく行政が自粛を国民にお願いするという手段にとどまっています。
これを強制的にすべきじゃないかという議論に今なっています。
ロックダウンは憲法上可能か?
ただ、そもそも日本国憲法上、強制が可能なのかを検討しなければなりません。
都市間の交通を制限すれば居住移転の自由を制約しますし、在宅勤務の義務化や営業禁止であれば、営業の自由を制約しますし、学校の休校は教育の自由や学習権を制約しますし、大人数の集会禁止は集会の自由や信教の自由を制約するものであるからです。
国民の生命・健康を守るために経済的自由に制限をかけること=経済的自由に対する消極目的規制といいます。
経済的自由に対する消極目的規制がどのような場合に憲法違反になるのか、既に判例がでています。
薬事法違憲判決(最大判昭和50年4月30日)=経済的自由に対する消極目的規制は、原則として自由に対するよりゆるやかな制限である規制によってはその目的を十分に達成することができないと認められることを要する(=LRAの原則)、憲法学の用語では、これをLRAの原則というんですが、要は、経済的自由に対する消極目的規制の場合は、最も人権に対する制約が小さい手段をえらばなければならない、そうでなければ憲法違反である、といってるわけです。
そうすると、ロックダウンがコロナを防ぐために最も人権制約が小さい手段でない限り憲法違反になると言っていると言ってるわけです。
ロックダウンが感染を防ぐために最も有効な手段であるというだけでは、合憲にはならないということです。
また、先ほど言った薬事法違憲判決は、職業選択の自由に関するものですが、ロックダウンは経済的自由以外の様々な人権を制限しますので、合憲かどうかはより厳しく判断されるものと考えられます。
ですので、ロックダウン以外に手段がないと思われるほどコロナの状況が悪化すれば合憲の可能性は高まるわけですが、それが現時点で明らかとまでは言えないと思いますので、現時点ではロックダウンは憲法違反になる可能性が非常に高いと考えられます。
ロックダウンを可能にするには、憲法に緊急事態条項を設けて、平時の公共の福祉とは異なる人権制約の根拠が必要であると思います。
外国では
ちなみに、外国を見ますと、スウェーデンでは憲法上国民の移動を禁止することができないという規定があるので、ロックダウンができませんでした。
スペインでは憲法裁判所が憲法上の緊急事態条項を発動せずにロックダウンをしたことが憲法違反であるとの判決が出ました。
アメリカのウィスコンシン州最高裁判所で外出禁止令が適正手続違反で違憲無効であるとの判決が下っています。
というわけで、今回は、ロックダウンは憲法違反の可能性が非常に高いということについて解説させていただきました。