高知県には国宝が三つしかない。その一つが日高村の小村神社の古代大刀。神社の祭神、国常立尊のご神体として祀られている。

ふだんは公開していないが、年に一回、大祭の11月15日だけ一般公開される。名称は「金銅荘環頭大刀拵・大刀身」。

「双竜銜玉」の環頭と「倒卵形」の鍔という特徴から、製作年代は古墳時代末期と推測され、大刀としては日本最古の伝世品と云われている。

ふつう古代の大刀は古墳の中から掘り出されるのに、ここだけは出土品ではない。

古墳時代の大刀は稲荷山古墳で出土した大刀が有名で、「獲加多支鹵大王」と銘記されて「雄略天皇」の名ではないかと大きな話題となった。

日本でもそんなに多く伝えられてはいない。同じものが出雲の安来市で出土されている。

小村神社に1400年間伝えられた由緒正しき大刀が人知れず小村神社に存在することが不思議だった。

小村神社は587(用命天皇2)年創建とされる土佐二宮である。一宮は土佐神社。

四国で二宮があるのは土佐だけ。この地を支配していた日下氏の祭神だった。

日高村には日下という地名が残る。日下氏の由来は諸説あるが、物部氏が蘇我氏に滅ぼされた後、世の中を避けるために日下を名乗ったという説が有力だ。

そもそもこれほどの大刀を持つには当時、相当の身分の人物でなければならない。

物部川流域に物部氏が流れ住んだという話も伝わっており、飛鳥時代に日高村に一族の一部がやってきたと考えれば、なかなか夢がある話ではないか。

伊予の越智国造の小知命(乎致命=おちのみこと)の墓が今治市の「日高」に伝わること等から、この小知命が当地に至り、国土開発の神として国常立命を祀り大刀を神体としたとする説もある。

日高村は仁淀川沿いを通る松山との街道筋にあたり、南から日高、佐川、越智と地名がつらなることから伊予から移住した一族が開発した土地であるというのも説得力がある。

伴 武澄